【解説】事業ドメインを定義して、自分たちの進むべき道を明確にしよう

「うちの会社は何をする会社なのか?」——この質問に、即答できる人は意外と少ないかもしれません。
実はこの答えこそが、 事業ドメイン と呼ばれるものです。企業にとっての“生存領域”とも言われ、現在から将来にわたって「どんな顧客に」「どんな価値を」「どのように」提供していくのかを示すものです。
今回は、この事業ドメインの考え方と、その活用の仕方について解説します。

ドメインとは何か

ドメインとは、事業の活動範囲を示す「事業領域」です。
範囲が狭すぎると、顧客の多様なニーズに応えられず、成長のチャンスを逃すかもしれません。
一方で、広すぎると経営資源が分散し、あらゆる競合と戦うことになってしまいます。
したがって、自社の強みを活かしつつ、顧客の価値を最大化できる範囲を見極めることが大切です。

事業ドメインをどう考えるか

では、どのようにして事業ドメインを定めればよいのでしょうか。
その際に役立つのが、経営学者エーベルが提唱した「3次元枠組」です。

この枠組みでは、次の3つの視点で事業を定義します。
誰に(Customer):どんな顧客を対象にするのか
何を(Function):どんなニーズや課題を満たすのか
どのように(Technology):どんな技術や手段で提供するのか

たとえば、コンビニエンスストアを例にとると、

コンビニは、「誰に何をどのように」提供しているのか。

・顧客:忙しい生活者
・ニーズ:手軽に必要な商品を購入したい
・技術・手段:全国展開された店舗網とPOSデータによる商品管理

このように整理することで、自社がどんな価値を提供しているのかが明確になります。

ドメインを明確にすることで見えてくるもの

事業ドメインを定義すると、企業が進むべき方向が明確になります。
新しい商品を企画するとき、M&Aや新規事業を検討するとき、あるいは既存事業を見直すときにも、判断基準となるのがドメインです。
「自社がどの市場で、どの顧客に、どんな価値を提供しているのか」が明確であれば、迷いの少ない戦略が立てられます。

また、定義したドメインは固定ではなく、時代の変化に合わせて見直すことが重要です。
顧客のニーズや技術の進化によって、ドメインの“最適範囲”は常に変化していきます。

生活の中でも使えるドメイン思考

事業ドメインの考え方は、企業だけのものではありません。
実は私たち個人のキャリアや生活にも応用できます。

たとえば自分の「キャリアドメイン」を考えてみると、

・誰に:どんな人や組織に貢献したいのか
・何を:どんな価値を提供したいのか
・どのように:どんなスキルや経験を使って提供するのか

こうした整理をすることで、今後の方向性ややりたいことがより明確になります。
「自分はどんな価値を提供して生きていきたいのか」という問いに対する答えを見つける手がかりになるでしょう。

まとめ

事業ドメインは、企業の存在意義を言語化するための重要な概念です。
適切に定義することで、経営資源の集中や戦略の一貫性を高めることができます。
そしてこの考え方は、企業だけでなく個人にも応用可能です。

自分自身のドメインを一度定義してみると、これからの“進むべき道”がよりクリアに見えてくるかもしれません。
ぜひ一度、「自分(または自社)のドメインは何か?」を考えてみてください。